ホンダの賃上げ闘争以来、「ルイスのターニング・ポイント(Lweisian Turning Point)」と呼ばれる経済学の概念が脚光を浴びています。

ルイスとは[黒人最初の]ノーベル賞を受賞した経済学者、アーサー・ルイスを指します。

彼は1950年代に「Economic Development with Unlimited Supplies of Labor」という本を書き、開発経済学に功績を残しました。

ルイスの主張は「無限に労働力の供給がある間は工員さんの賃金は余り上昇しない」というものです。



その無限の労働力は普通、農村から供給されます。

最初は農業より工業の方が生産性が高いので、工員さんに支払うお給料は農家の収入より魅力的な水準に設定されます。

中国では当初、農村の労働人口が余っていたので都会に働きに出た方が有利な収入を得られました。

このような構図をルイスは二重経済モデル(Dual sector model)と呼んでいます。

農村はルイスの定義では生存維持的部門(伝統的部門=低賃金で無制限に近い労働供給がある)に相当します。

一方、深センなどの都会は資本家的部門(近代部門=大量の資本がある)に相当します。

生存維持的部門から近代的部門へ労働力が絶え間なく流入している間は一定の賃金水準で労働供給曲線が無限に弾力的になります。

しかしルイスの理論によれば追加的労働力の投入は限界生産力や相対的賃金を押し下げる働きがある一方、農家は残った人手が少なくなると農家での収入は上昇し、これにより賃金は平準化されます。

するとある時点から農村から都市への労働力の流れが悪くなってしまうのです。

その場合、労働者へのインセンティブ(良い社員寮、良い賃金、より多い休日など)を増やさなければ雇用が確保できなくなります。また賃金はどんどん上昇しはじめます。これが「ルイスのターニング・ポイント」と呼ばれる地点なのです。

この説明からもうかがえるように現在の中国で相次いで起こっている労働争議は極めてマクロ経済的な現象であり、後戻りできない類の構造変化だと言えます。


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ソローのモデル:

簡単に言うと、戦争などで労働力が減れば全体K(またはβ?)=資本ストックの絶対数は減る。
少子化で資産家の遺産が少数者に集まればr資本収益率は相対的に上がる。
部門2と部門1の人口増減は性質が違う対社会効果になる。
人口と成長率の交互の上下動は、国家と資本の関係、自由主義と帝国主義の交互性、
循環性に似ている。
(ピケティは資本主義の周期性を重視しないが、その累進課税案は周期性の自覚的導入だ。)


 所得         δK
  |        / 
Y2|_______○dK  ○sY
  |    ○  /|
Y1|  ○  / |
  |    /  |
  | ○ /   |   
  |  /    | 
  | /     |
  |/______|______資本
      K   K'

Y を生産量、K を資本(資本ストック)、s を貯蓄率、δ を資本消耗率とする。
☆ソローの成長理論1956年(※)で β=s/g などが説明される(ルイスのモデルも需要曲線を点線で描くべきだった)。

  • Solow, Robert M (1956). "A Contribution to the Theory of Economic Growth". Quarterly Journal of Economics (The MIT Press) 70 (1): 65–94 [1]doi:10.2307/1884513JSTOR 1884513.
  • http://piketty.pse.ens.fr/files/Solow1956.pdf(原文)
  • 邦訳「経済成長理論への一寄与」( 『資本 成長 技術進歩』 R.M.ソロー著 ,竹内書店新社;1988年,所収)。後の『成長理論』ではKの略語はβではなくvを使用。
  •             人口減少&成長率アップ 人口増加&成長率ダウン





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ソロー・スワンモデル

ロバート・ソロートレイヴァー・スワンが1956年に提唱した成長モデルの1つ、生産関数の考え方、その導き出す結論が新古典派の思想に共通することから、新古典派成長モデルとも呼ばれる。
基本的なアイディアは、資本の増加が人口増加を上回った際に、資本1単位あたりの生産効率がだんだん下がる(資本量が2倍になっても生産は2倍にはならず、1-2倍の範囲内に収まる)ために、資本の増加量が鈍化し、人口増加率に追いつき、逆に人口増加が資本の増加を上回った場合には資本1単位あたりの生産効率が上昇するために資本増加率は人口増加率に追いつくというものである。一時的なショックにより資本と人口の増加率が乖離しても、長期的な資本の増加は人口増加率に収束し、資本をより効率的に使えるような新技術の登場がない限りは一人当たりの国民所得は増加しないという結論を導いた。
成長理論の雛型として教科書に登場する非常に簡単なモデルであるにも関わらず、依然として経済成長の分析に多用されている。最も良くみられる分析は、経済成長の要因を資本、労働、技術進歩の各要因に分解することである。こうした分析は、アラモビッツやソローによって始められた、成長会計と呼ばれる手法である。技術進歩率は経済成長を資本と労働の寄与で説明した残りとして求められるため、ソロー残差と呼ばれることもある。
このモデルの欠点は、技術進歩と貯蓄率が外生的に与えられていることで、これを改善するために次に示すようなモデルの展開を導いた。

フォン・ノイマンの多部門成長モデル

フォン・ノイマンが1937年に発表した経済成長モデル。新古典派成長モデルの基となったラムゼイのモデルが1部門の経済成長モデルであるのに対し、各種の財の生産、投資がなされる現実の経済に即したモデルの構築が行われた。
多部門モデルは、第二次世界大戦後、サミュエルソン、森嶋らの努力によって改良が加えられた。サミュエルソンの見出したターンパイク定理はとりわけ有名な発見である。

付記:

●対談を終えて 吉川洋
 ピケティ教授の『21世紀の資本』が世界的なインパクトを与えた背景は、改めて言うまでもなく、格差が今日グローバルな問題になっているからだろう。ただし、格差の実態は国により時代により様々だ。
 対談でも述べたが、日本ではトップ1%の金持ちの問題もさることながら、下層での格差の広がりのほうがはるかに大きな問題である。このことは「ピケティ・フィーバー」の起きるだいぶ以前から、橘木俊詔著『日本の経済格差』(1998)、大竹文雄著『日本の不平等』(2005)などの優れた貢献を通して、われわれが認識してきたことだ。
 ピケティ教授の学問的な貢献は、18世紀までさかのぼるフランスの税務統計を詳細に調べた実証分析である。教授の格差論で重要な役割を果たしているのが、資本(資産)/所得比率だが、『21世紀の資本』では英仏における資本/所得の長期の時系列が印象深い形でグラフ化されている。日本は英仏より100年遅れて明治以降になるが、一橋大学の経済学者グループにより、世界に誇るべき長期統計が整えられている(問題の資本/所得比率も長期経済統計3巻『資本ストック』にある)。
 ピケティ教授の来日を機に、日本の若い経済学者・エコノミストにより、こうした過去の成果が新たな光の下で活用されることを望みたい。