日曜日, 2月 25, 2018

地政学の逆襲:転載



地政学の逆襲
『ネットワーク分析―何が行為を決定するか』(安田雪、新曜社)で紹介されていた、スナイダーとキックの論文*は興味深い。
ウォーラーステインが、直観的に中心、周辺として分けた国際的な従属構造を数値化しているのだ。




しかし、これらはパラメーターの選び方にもよるが、基本的には軍事力と経済力が従属関係を決定するという結論が先に見えているものだ。ヘーゲルのように主人―奴隷関係として思弁化していない点は偉いとは思うが、、、

これに対して、最近柄谷行人が紹介しているウィットフォーゲル(以前このブログでも紹介した**)などはそれに対して地政学の重要性を示している。
こちらのほうが、これからのアメリカ、日本のあり方を指し示しているように思う。
アメリカ合衆国は南米に吸収されるだろうし、日本は「島」だということが重要になるのだ。

追記:
地政学の重要性は、以前にも書いたが、スケールフリーを誘発するネット社会が、「地域」という実体をもつことではじめてスケールフリー化を防ぐことができるという展望にも関わる。



Structural Position in the World System and Economic Growth, 1955-1970: A Multiple-Network
Analysis of Transnational Interactions
David Snyder; Edward L. Kick
The American Journal of Sociology, Vol. 84, No. 5. (Mar., 1979), pp. 1096-1126.
Stable URL:
http://links.jstor.org/sici?sici=0002-9602%28197903%2984%3A5%3C1096%3ASPITWS%3E2.0.CO%3B2-X 



現代の地政学

〈犀の教室〉
佐藤優 著
四六判 320頁 定価:本体1500円+税
978-4-7949-6826-5 C0031 〔2016年7月〕

この知見を抜きにして、世界情勢は語れない。
話題の「地政学」テキストの決定版!
イギリスのEU離脱で揺れるヨーロッパ、泥沼化する中東情勢、「イスラム国」の脅威、世界に広がるテロ・難民問題、覇権国家の思惑、宗教・宗派間の対立……複雑に動く国際情勢を読み解くには、いま「地政学」の知見が欠かせない。各国インテリジェンスとのパイプを持ち、常に最新の情報を発信し続ける著者が、現代を生きるための基礎教養としての地政学をレクチャーする。世界を動かす「見えざる力の法則」の全貌を明らかにする、地政学テキストの決定版!
―――――――――――――――――――――――――
【目次】
第一講 地政学とは何か
第二講 ハートランドの意味
第三講 ヨーロッパと中東
第四講 海洋国家とは何か
第五講 二一世紀の地政学的展望
____

マンガでわかる地政学 (池田書店) Kindle版


**

還ってきたウィットフォーゲル

『 「東洋的専制主義」論の今日性—還ってきたウィットフォーゲル 』(湯浅 赳男 )はルサンチマンが漂う文体だが、非常に興味深い研究書だ。
湯浅氏の訳した『オリエンタル・デスポティズム』などは、日本の官僚機構を見ると今日的な書だと思うが、本書はその絶好のイントロダクションだろう。
ネットワーク理論を研究していて思ったことだが、地政学的視点(ウィットフォーゲルの理論も一義的には地政学だ)がないとその理論そのものがスケールフリー(格差拡大的)、デスポティズム(専制主義的)になってしまうのだ。
内容的には、思想の状況論よりも実質において、亜周辺が中心に移行する過程が解明されるともっと有意義ではあろうが、、、
『源氏物語』が中心にいる中国の宦官の目から見れば冒涜の書であるという記述(p90)など、中心/周辺/亜周辺の考察がいかにアクチュアリティを持つかがわかる。マルクスの相対化などはこうした考察抜きには不可能だろう。

また冒頭の図式付きの要約がありがたい。以下引用です(ちなみに図で捨象されたという遊牧民の問題に関しては『世界史の誕生』 (ちくま文庫) 岡田 英弘が示唆に富む)。



本書の要点
*水力国家とは、単に水利・治水を行う国家ではなく、自然と間接的に関わる工業社会型国家と同じレヴュルの概念で、自然と直接的に関わる国家である。
*文明は中心・周辺・亜周辺の三重構造をつくっている (上図)。
*階級の社会学には、(権力)の階級社会学と(所有)の階級社会学とがある。
*『オリエンタル・デスポティズム』(東洋的専制主義)を一般理論とすれば、『資本論』は特殊理論である。 



図解 いちばんやさしい地政学の本 単行本(ソフトカバー) – 2017/5/30